9/20に新作EP「珍宝EP」をリリースする、「西新宿パンティーズ」(西パン)。MCくんに君、Snoopバタ子、あでぃぽい、尺八、DJバクテリア・シークレットの5名をメインメンバーとして、パンティーを被ったパフォーマンスを展開する彼らは東京レインボープライドやオネエスタイルダンジョン(二丁目で開催されているドラァグクイーントのラップバトルイベント)など、各イベントで引っ張りだこ。EP発売に先駆けて、MCくんに君さん、あでぃぽいさんに、今回のEPの制作経緯を語っていただきました。
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西パンらしさは「バイブスとパンティーへの愛」
-今回の「君に壁ドン part-2」は、これまでの楽曲と比較すると、メッセージソングという印象が強くありました。クルー内で、改めてそうしたメッセージソングを出すことに対する否定的な意見はなかったですか?
くんに君:思想というか、ものの考え方はみんな近いと思います。くだらないことで揉めたことはあっても、主義主張的な部分で揉めることは今までにないですね。
「君に壁ドン part-2」のベースは、震災後に作った「パンティーは平和」っていう曲なんです。それをいつかもう一度やろう、という話自体は前からあったし、メンバーもみんな根底には、伝えたいメッセージ的なものがずっと何かしらあるんじゃないかと思いますよ。
あでぃぽい:震災直後の結成当初から、そういうポリティカルな面はあったっていうことですよね。
くんに君:あの時は結局下ネタに逃げたけど(笑)
あでぃぽい:僕は途中から入ったんですが、そういう思想的な部分は同じだな、と感じています。示し合わせたわけじゃないのに、国会前でばったり会ったり。ちょうどいいから曲の話しようか、なんてこともありました(笑)
くんに君:今回は6人のマイクリレーだったけど、もうメチャクチャでしたね(笑)言ってることもラップの仕方も。
-でも、通して聴いてみると一貫性を感じました。
くんに君:曲を作ろうと思ったのが、ちょうどトランプ大統領が「メキシコとの間に壁を作る」っていう声明を出した頃だったんです。国境に壁を作るって、あまりにもグローバリズムの時代から逆行した発言だったから、何かメッセージを出したくて、今「パンティーは平和」をもう一度録りたいな、と。ちょうど前に「君に壁ドン」という曲をリリースしていたから、「壁ドン=壁を壊す」というのを共通のテーマに設定して、各自リリックを書いていきました。
ただ、メッセージがあまりにも前に出過ぎている曲もたまにあるじゃないですか。そうではなくて、我々らしさっていうのは失わないようにしていました。それは常にちんぽ・まんこって言い続けるって部分ですね。
-今回、豆尖さんとフィーチャリングした理由は?
くんに君:以前、ピーチ岩崎さん主催のM.P.C.や、SORARINOくん(志人やなのるなもないとのフィーチャリング曲もある、ナードコアのMC)主催のBALOONというイベントに呼んでいただいた時にご一緒したことがあったんです。その時から、すごいかっこいいし、我々と全てが正反対だな、と思っていました。いつかタイミングが合えば誘いたいな、と。
いわゆる王道のHIP HOPっていうものが円の中心にあるとしたら、西パンはその円の端っこにいて、豆尖って真逆の端にいると思うんですよ。その両者が曲を一緒に作ったら面白くなるだろうし、多様性を表現できるな、と思いました。タイプは真逆なんだけど、実はどこか近いものを感じたりもするんですよね。それは中心からの離れ具合なのかな。
だからこそ今回、豆尖には、「豆尖は豆尖のやり方でラップしてください、僕たちに絶対に寄せないでください」ってお願いしてたんですよ。この曲は何度かデモを録ったりして、結構時間をかけて作ったんですけど、途中で「もうちょっと俺らのバースに下ネタ増やそう」っていうチューニングはしましたね(笑)あでぃぽいなんかはラップが上手いから、「あれ、今のバース豆尖じゃね?」ってなっちゃって。だから、「君に壁ドン part-2」はメッセージソングだ、って言っていますが、豆尖のバースを除いたらただの下ネタソングですよ(笑)
あでぃぽい:「もうちょっと下ネタ増やした方がいいんじゃない?」とか言われて、僕も下ネタを足しましたね。
-先ほどお話にも出た、「西パンらしさ」って、何でしょうか。
くんに君:下ネタ……って言ってしまうとそれまでなんだけど(笑)、下ネタ=開け放つっていうことだと思うんですよね。だって仲良くならないと、下ネタって言わないじゃないですか。パンティーを被るのも、決して顔を隠すためではなくて、むしろ恥ずかしい姿を見せて、心を開いているんじゃないかと思っています。
あでぃぽい:僕は西パンの垢抜けないところが好きなんです。あとから加入したので、もともとはリスナーサイドにいたんですけど、本当におっさん達が「何かしたい!」っていう初期衝動で始めて、「ああ、こっちの方向にいっちゃったか……」みたいな(笑)そういうエネルギーを持て余している感じというか、バイブスだけで何とかしようとしてる感じが、俺、めちゃめちゃいいな、と思ってて。
くんに君:そうかもしれない(笑)ラップがうますぎて、何を言ってるかに重きを置いていないラッパーってよくいるじゃないですか。音楽的に極めるとどんどんそうなっていくと思いますし、かっこいい人もいっぱいいますけど…でも、例えばラッパーが本業じゃないみうらじゅんのラップとかって、ものすごい伝わってくるわけですよ。
そういう、「技術ではないけれど伝わるラップ」っていうのを極めていきたいです、技術は極められないので(笑)そういう意味だと、僕ららしさは、バイブスとパンティーへの愛かな、と思いますね。
-ちなみに西パンは、パンティーを被れば誰でも入れるんですか?
くんに君:もちろん!パンティー被れば今日からマイメンですよ。レギュラー・準レギュラー・幽霊部員合わせて150人くらいいますから。
でも、Showgunn(「君に壁ドン」「This Is How We Chill from 222’til…」に参加)とかは、下ネタが大嫌いなんですよ。だから彼は頑なにパンティーを被らずに、ライブの時も手に巻いたりしてますね。Showgunnとは僕らのライブを見てもらう前に、高田馬場の居酒屋で仲良くなって、ずっと「俺は下ネタ好きじゃないんだ」って言っていたんですけど、ライブを見たらすごく気に入ってくれて。我々の下ネタって、アブストラクトな感じなので、一緒にやれたんじゃないかな。だから被ってもらわなくても全然大丈夫(笑)
9/20(クンニリングスの日)にEP発売!!
-最後に、今回のEPのご紹介をお願いします。
くんに君:今回のEPは全3曲です。まず「君に壁ドン part-2」と、2曲目が「マザファッカー」という曲(笑)それは、S.P.C.のラッパー、KAZMANIACさんとのフィーチャリングです。KAZMANIACさんはめちゃめちゃラップがうまいんですけど、本当にエロいんですよ。中学生並の性欲を未だに維持している感じです(笑)東海岸系の90年代風のビートで、「下ネタマフィア」をテーマにしています。PRO.は「君に壁ドン part-2」と同じく8ronixさんです。
3曲目が、結成当初からライブで歌っていた、「僕らがパンティー被る理由」です。嫁入りランドさんに、80年代のアイドル風に歌ってもらっています。こちらのPRO.はKuma the Sureshotさん。
今回は全曲、フィーチャリングのアーティストさんをお迎えしていますが、相手の個性を我々の色と一緒に出せるという意味で、フィーチャリングは楽しいと思っています。自分の世界だけを掘り下げていくタイプの人もいますが、ラップは個性を主張する音楽だから、その主張同士が混ざり合うのが面白いですね。どんな曲を作ってもパンティー色に染められるし、あえて「君に壁ドン part-2」の豆尖みたいに、僕らにあわせてもらわなくても何かが生まれると思います。
あと、8ronixさんもKuma the Sureshotさんも、いつもビートがめちゃくちゃかっこいいので、下ネタがお嫌いな方はインストだけでも、ぜひ(笑)
もともと9/2(クンニの日)に発売予定だったんですが、レコーディングが延びて、9/20(クンニリングスの日)に発売になりました。
-(笑)最高じゃないですか。
くんに君:もともとはpunpeeのアルバムが9/20発売予定だったので、「punpeeさんを買ったお釣りでパンティーも買ってね!」と言うつもりだったんですけど、punpeeさんのアルバムが延期になるっていうね(笑)
あでぃぽい:大変恐縮ではございますし、大変僭越ではございますが、punpee様の代わりにパンティーをご購入いただければ幸いに存じます、という感じですね(笑)
(聞き手:Yasco. 構成:KANEKO THE FULLTIME 文:Yasco.)
▼西新宿パンティーズ 次回作 EP「珍宝EP」 2017年9月20日リリース予定