「『こいつの話を聞く価値がある』って思わせたい」NONKEYロングインタビュー(前編)

「横浜No.1パーティロッカー」の異名を持つMCとして、横浜を拠点に全国各地で活動をしているNONKEYさん。ラッパーとしての活動はもちろん、司会やレゲエ現場、お笑いと、幅広い分野で活動されています。
そんなNONKEYさんが、7/20に新曲「ハッピーエンド」をリリース。常にエンターテイナーとして現場を盛り上げるNONKEYさんのこれまでの活動と、新曲制作の経緯について、お話を伺いました。

自分が楽しいと思うことを全部真剣にやっている

「自己紹介して」って言われると結構難しいんです。ラップのライブやバトル、司会活動、レゲエ現場で歌っていたり、DJのサイドで喋ったりとか、定期的にではないけどR-1グランプリのようなお笑いにも出たり……。
仕事を受けた時に、人に紹介してもらって初めて、「この人は自分のことをこう思っているんだ」っていうのがわかる。例えば「この人はラップうまいんだよ」とかね。でも今自分がやっている活動を、俺は全部まとめて「MC」だと思っているし、自己紹介するときも「MCです」って言います。相手が自分をどう紹介したいのかに「投げちゃう」っていう感じかな。
軸がないって言ったらおかしいけど、どの活動がメインだ、っていうのはないです。出演の割合も、司会とラップが半々くらい。ただ、今自分のどの部分が調子いいな、悪いなっていうバイオリズムみたいなものがある感じ。野球選手が、バッティングの調子がいい時と、守備の調子がいい時があるのと同じですね。

自分が楽しいと思うことしかやってないんですよ。だから全部同じレベルで真剣にやっている。「今日司会で呼ばれているから適当にやるか」みたいなことは絶対にないし、自分ができるベストを出したいと思う。あと、いただいたオファーは基本的に断らないかな。自分に商品価値がある、って思ってもらえている、ということだから。
でも、実は自分の中で自信のない部分があって、それがフリースタイルやMCバトル。自分でうまいと思ったことは一度もないし……でもMCバトルは強いとは思います。だから、「この人はMCバトル強い人なんだよ」って紹介されると、「この人は俺のこと、何にも知らねえな」って思うかな(笑)

司会の経験があるから、というのもあるけど、プレイヤーとして出ている時も、冷静にイベント全体を見渡して、全体的に何をするべきかっていうのを考えています。客視点に立つ、というか。例えば、ラッパー人狼というイベントの第2回目。他の出演者のことをあまり知らなかったし、メンツを聞いた時点で「喋れるやつが少ないな」と思った。だからKMCにまず飲ませて、こいつが酔っ払うと面白いんだぞ、っていうのを見せたりとか、せっかく審査員に漢くんとかホリエモンさんがいるんだったら、彼らにもラップさせなきゃダメだろう、それをお客さんが見たがっているだろう、とか考えたりね。

「MC」っていうところのルーツでいうと中学3年生まで遡ります。俺は生徒会長をやっていたんだけど、月に1回の朝礼で、生徒の前で話をしないといけない、っていう役目があった。はじめは何を話すか、全部原稿を書いていたんだけど、2回目からは「原稿はいらねえな」と。ポイントだけ書いた紙を作って、その間はフリートークでつないで話す。それが初めて得た「MC感」だったかな。
初めて、人がお金を払ってくれる箱で、LIFE EARTHとして歌ったのが1999年。HIPHOPはもともと暗い音楽だな、って思ってたし、あまりぐっとこなかった。J-POP以外の音楽との出会いは中学3年で、YMOを聞いた時です。そのあとシンセサイザーや、DTMでの打ち込みはやっていたんだけど、それこそ1999年、横浜のHMVでバトルDJ ~ dj hondaとRoc Raidaのビデオが流れていた。これを見て、「これは間違いなくモテる!」ってターンテーブルを買いました(笑)

あとその頃、テレビ神奈川で水曜日の夜10時にやっているBillboard TOP40を見てたんです。YMOしかり、J-POPじゃない音楽に感化されたやつがみんな見てるような番組だった。その中の、昔の人気チャートが流れるコーナーで、Naughty By Natureの「O.P.P.」がかかった。

これがJackson5「ABC」のビートをサンプリングした、びっくりするくらい明るい曲で……この曲名って「Other People’s Pussy」、ようは「他人の女とヤッちまう」って曲だから、そりゃアッパーだよね(笑)。ずっとHIPHOPは暗い曲ばっかりだと思っていたから、それもまた、興味を持つプラスのきっかけになった。
そんなこんなで、バトルDJになるはずだった俺は、スクラッチが全然できなくて、気がついたらラップをしてた……ってわけです。LIFE EARTHではトラックを作ったりもしていたけど、今は「かっこいいやつがめちゃめちゃいるし、勝てねえわ!」と思うからそれ以来やってない。とりあえず、なんでもやってみたいんですよ(笑)

新曲は「将来へのひとつの助走」

LIFE EARTHは、俺とDJ CANとHI-TOWERの3人組。HI-TOWERはもう音楽活動はしていないけど、解散はしていない。彼は今、スリッパ屋の営業をやっています。俺も長くやっているから、HI-TOWERのように辞めたやつもそりゃいるけど、俺ら世代はかなり活動し続けている人が多いと思いますね。
俺たちはさんぴんキャンプが、高校2・3年の頃の世代。だからモロに影響を受けてるんだよね。高校に行くと、マンハッタンレコードの袋にみんなが体操着を入れて持ってきているみたいな感じ。DJが一番モテるんじゃないか、って言って、自称DJのやつもいっぱいいたよ(笑)
同世代のICE BAHNは、玉露さんがさんぴんを見に行ってて、飛んできてバリバリになった「証言」のレコードを殴り合いしながら奪い合って、その翌日、KITさんに電話で「俺らもラップしようぜ」って言ってラップを始めたそうです。今聞いたら美談にも聞こえるけど、やっぱり狂ってるし馬鹿な話だな、とも思う(笑)。だから、影響を受けて狂わされて、それでも楽しくやっている俺らの世代には、仕事をしながらでも、子供がいても続けているやつが多い。(サイプレス)上野は俺の1つ下だし、ICE BAHNの玉露さん・KITさんが2つ上、FORKがタメ。KEN(THE390)やTARO SOULは2つ下……だから20代中盤〜後半の子はあまりいない印象があるけど、俺ら世代は結構生き残っているかな。狂わされたままずっと走ってる。かっこよく言えば、「ピュア」(笑)

だって、第4土曜日にICE BAHNとかと一緒に毎月やっている「CLEAN UP」っていうイベントがあって、それは2017年の6月で19周年。すごいでしょう? 今年3月に閉店してしまった横浜のclub Lizardとかで、サイプレス上野たちと一緒にやっていた「建設的」も、場所を変えながらではあるけれど、長く続けてきたイベントです。

実は今回の曲「ハッピーエンド」は、病気をする前に出来上がっていたんですよ。「建設的」ですごく楽しかった会があって、その翌日にリリックを書いた思い出があるな。

こういうのを言うのは恥ずかしいけど、ライブに関しては、最後の1曲をいかに聴かせるか、ということを考えながら作っています。要するに、「こいつの話を聞く価値がある」って思わせたい。最終的に伝えたいことを歌うための、助走をしているような感覚です。
俺ら世代にとってのMCバトルもその助走のひとつ。俺たちは、それこそ1999〜2001年、B-BOY PARKでのKREVAくんの3連覇を見ていて、MCバトルに勝つとこんなに名前が売れるんだ、って思ったんだよね。MCバトルはあくまでも、ライブや音源を聞いてもらうための宣伝で、あくまでも助走の1歩目。バトルで興味を持ってくれた人がライブに来てくれて、その中で流れを作って、最終的に自分の言いたいことを聴かせる。それが俺ら世代のやり方でした。

これはHIPHOPに限ったことではなくて、昔は動画とかもなかったから、ライブをライブで見てもらうしかなかった。でも今は先に曲の知名度をあげて、「このアーティストの、この曲をライブに聞きに行こう」と思わせる……という風に、助走の仕方が変わってきている。

曲の中で、「あちらこちらに散らばってて / あいつやあいつも来たがってて / 来れないメンツを皆待ってて / 言い合うのさ、俺ら暇だってね 」っていう部分があります。今は現場に来なくても曲を聞いてもらえる時代になっているから、最近イベントに遊びに来れてないようなやつにも、この曲を聴いてもらえば、「俺ら世代のやつがこんな感じでやってるんだな」って思ってもらえる。それでひょっこり、「久しぶりに来たわ」って顔出してもらってもいいしね。
曲は死なないから、10年後でも20年後でも、38歳の俺が思っていたことはずっと残っていく。だから、例えば50歳になった時に、「俺たちこんなこと考えてたよね」っていう風にも聴けるわけじゃない。そう考えると、この曲自体が、将来へのひとつの助走になりえるんじゃないかな、とも思っています。

2017/07/20 リリース:NONKEY&DJ CAN 「ハッピーエンド」

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(構成、文: Yasco.)

▼インタビュー 後編はこちら

「俺以上に『俺』なやつはいないと思ったから復帰できた」NONKEYロングインタビュー(後編)