「相手を喜ばせることで、自分も気持ちよく生きられる」FRANKENロングインタビュー 後編

フリースタイルダンジョン出演以来、高速ラップと独特のラインで注目を集め続ける、“築地の人造ラップマシーン” ことフランケンさん。10月22日に行われた『戦極MC BATTLE ROYAL 2017』でも、台風という悪天候の中集まったヘッズたちに数々のパンチラインを投げかけ、会場を大いに盛り上げるなど、今一番勢いがあるラッパーと言っても過言ではありません。
SNSでのフリースタイルラップを続けるフランケンさんですが、その発信力はどこからくるものなのでしょうか。後編では、ダンジョン以降のご活動と、HIP HOPとの向き合い方について、お話を伺いました。

▼インタビュー前編はこちら

「チャンスはすべて“フリースタイル”で掴んできた」“築地の人造ラップマシーン” FRANKENロングインタビュー 前編

「フランケンが嫌い」と言うなら、その理由が知りたい

—これはフランケンさんに限らずですが、SNSの意見って肯定的なものばかりではないですよね。顔が見えないこともありますし。でもフランケンさんはとにかくポジティブで、生意気な感じの子へのリプライにもしっかり無視せず対応しているのを見て、普通だったら怒ってしまう方も多いのに、すごいなと感じました。

Twitterで怒っても仕方ないしね。落ち込むこともありますけど、ずっと走り続けていたいから、結果的にポジティブなパワーが勝つんですよ。
SNSでのコミュニケーションでは、例えば「フランケンが嫌い」と言われるのであれば、僕はそうやって言ってくる理由が知りたいんです。理由がわかればそれを改善することもできるし、その理由が自分のやり方と反していたら取り入れないこともあるけど、まず意見を聞くのは大切ですよね。

女性に関しても僕はそういうスタンスなんです。好意を持ったら、それが会って1日目でも関係なく、必ず自分から想いを伝えます。「君のことが好きです、付き合いたいけどすぐには無理だろうから、今後デートをして僕のことをいろいろ知った上で、好きかどうか考えて欲しい」っていう前提を、思った段階で伝えておかないと、その後デートをしても意味がないなと思うんですよね。もじもじしてお互いに言いたいことや意見も言わないようじゃ、引きずるし悩んじゃうじゃないですか。
何においても、言わないで後悔するのが僕は嫌なんです。「ダメです、あなたのことが嫌いです」って言うのが聞けて、初めてゴングが鳴るんですよね。だってすぐにうまくいくことなんて、人生そうそうないんですから。失敗して諦めるのは簡単だけど、そこで反省して克服しようと思って初めて、スタートラインなんですよね。

—今まさに、ダンジョンやその後のSNSの投稿でフランケンさんを知った方々が多いかと思いますが、これまでも色々なところでフリースタイルをされてきて、注目を集めることも多かったんじゃないですか。

目立つことがずっと好きだったんですよ。あとB型だから、自分の事が好きなんじゃないかな。
僕は小さい時から、家族からすごく愛を受けてきて、家族もエンターテイメントな人達だったんですよね。お客さんが来たらステージが作られて、おじいちゃんたちの前でピンクレディーのUFOを踊ったりとか、おばあちゃんも一緒になって歌ったり。そういうのを見て育っているし、なるべくしてこうなったんじゃないかなと思います。

実はラップを始めたのも「モテたい!」と思ったのがきっかけなんです。初めてクラブに行ったのが六本木で開催されていた「さびしんぼナイト」だったのですが、カッコイイラッパーがたくさんいて、周りを可愛い女の子が取り囲んでいて。だから、俺もあんな風になりたいな、と思ってラップを始めたけど、今は、限られた人生の中で、フランケンというラッパーがいたんだということを、みんなの記憶の中に残したい・生きた証を残したい、という気持ちでやっています。

あと、今となっては、ラップが生きる糧なんですよ。ラップをしていないと、エネルギーを持て余して空回ってしまう気がします。逆にラップをやってバイブスのバランスを取っているからこそ、築地での仕事も良好になっている気がするし。ラップが精神安定剤ですよね。

「なんとなくわかる」がHIP HOPの一番楽しい部分

—フランケンさんのラップを聴いて、ずっと、USっぽいフロウだな、と感じていたのですが。

それはDJ CASHさんのおかげかもしれませんね。CASHさんに毎日曲を作って送っていた当時、フロウに関しても一からアドバイスをしてくれて、US風のフロウを叩き込まれました。あと、洋楽のMIX CDをとにかく聴き漁っていましたね。以前、Harlemのレギュラーイベントで6年くらいサイドMCもしていたんですよ。サイドMCってもちろん曲名を言ったりもしますけど、しゃべっていない時のノリ方とか、口ずさんでいるのとかを見て、お客さんが「あ、あのMCわかってるな」って思うわけじゃないですか。

昔ほどではないですが、今も新譜は常に家で流すようにしていて、最近はどういう感じのフロウが流行っているんだろう、っていうのをチェックして、自分のスタイルに取り入れたりもします。もちろんそのままマネするわけではなく、自分なりに昇華して、オリジナルスタイルに取り入れれば、変な「パクり」ではなく、色んなスパイスが入っているラップになると思っています。
あとは若手のMCと一緒にレコーディングをさせてもらうこともあります。みんなやっぱりラップがうまいし、自分がそのままだったら交わらないような人と交流すると、スタイルが違うからお互いに刺激になるんですよね。

普段から心がけていることではあるのですが、普段同じことばかり繰り返して特に刺激のないままだと、つまらない人になってしまうと思うんです。
だから、ひとつだけでも毎日昨日と違うことをしてみて、フレッシュさを常にキープしたいと思っています。例えば、いつもとは違う道を通って帰ってみるとか、そういう小さいことをするだけでも違う景色が見えるし、気持ちが変わってくるんですよね。同じ事ばかり繰り返していると、自分自身もマンネリ化して飽きてしまうので。

それは仕事であれ、ラップであれ、友人や男女関係でも同じ。あえて友達の友達と積極的に飲みに行ったりとか、女性も普段自分がいるHIP HOP界隈にはいないOLさんと付き合ってみたりとか。一時期、フランケンっていう名前や活動実績があるから女の子が付き合ってくれるんじゃないか、と思ったことがあったんです。じゃあ、HIP HOPがない状態で、俺はどれだけ勝負できるんだ、と考えて、ラップの話も特にせずにお付き合いをしたこともありました。

—会社員でも、肩書や会社の名前を出してしまうと、それだけで評価されてしまうこともあるので、悩んでいる人もいるのではないかと思います。逆にそれを捨てるのは勇気がいることでもありますよね。

一度そういうのを捨ててみると、自分の人生経験とか実力が試されますよ。そこで挫折したり、ショックをうけたりしてもいいんですよ。僕自身も、ラップのうまさ云々ではなく、その人自身の人間力=魅力があるかどうかがキーポイントだと思っています。
だからこそ、ラップだけやっていればいい、っていう考えじゃなくて、築地での仕事やプライベートも大切にしたいですね。HIP HOPっていうのは生き様ですから、嬉しいことも「ああ畜生」って思うようなことも、すべてが学びになりますから。

ずっと続けてきたラジオも、同じように自分の学びになっているなと思います。何より人の話を聞くスキルが身につきました。あくまで個人的な意見ですが、いい聞き手って、相手が話した話題に関して、ちょっとスパイスを入れて、さらに面白くしてあげられる人だと思います。話してくれた相手も気持ちいいですし、それが相手を喜ばせるサービス精神なんですよね。僕もそうやって人を喜ばせることによって、気持ちよく生きられるなと。
要は何事も、結局は人対人のコミュニケーションなんですよね。例えば僕、「なんとなくわかる」っていうのがHIP HOPで一番楽しい部分だと思うんですよ。例えば、以前フリースタイルで、「俺はB型のクワガタ!」なんて言いましたけど、そういう言葉を聞くと、「ニュアンスはなんとなくわかるけど、この人、本当は何を言いたかったんだろう」って相手も想像するじゃないですか。それはもう、僕のことを気にしてくれているっていうことだから、それが重なってファンになってくれる人が増えればいいなと思っていますね。そこでコミュニケーションが生まれて、普段何が好きなのか、どうしてHIP HOPを聞いているのか、どうして俺のことを好きになってくれたのかとかを全部聞きたいんです。それが勉強になるし、俺のリリックにもなりますし、全部無駄なことはないなと思っています。

(聞き手:motoz 構成・文:Yasco. KANEKO THE FULLTIME)

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