「やりたいことを自分でわかって、素直にやっていれば、それが一番ジャスト」PONY ロングインタビュー(後編)

そのラップスキルの高さと言葉選びの深さで、多くのヘッズから支持を得ている、ラッパー・PONYさんのロングインタビュー。後編では、PONYさんの抱かれている未来への意志と、今回メディア名としてもお借りした「SUKIKATTE」の楽曲について、お話を伺います。

▼前編はこちら

「楽しみ方を忘れたら終わりだな、って思う」 PONYロングインタビュー(前編)

自分で考える力をみんなが持てれば、世界も変わる

—その時々で、やりたいことややるべきことは変化するものというお話がありましたが、今PONYさんがやりたいと思われていることについて伺わせてください。

たくさんあるけど、今までに作った音源をひとつ形にして、アルバムを完成させたいな。それ持って旅したい。うん。

以前から俺の中には、「人類stand up!」みたいな思考があるんです。俺達には、人としてもっと良く生きる方法がある気がしてならないんですよね。今世間で提示されているやり方とは別の生き方もあるってことや、今の生き方によって失われているものもたくさんあるんだけど、どう思う?っていうのを、意識的に若い子たちや子供たちに問いかけたい。「そんなこと言われても何も変わらないじゃん」っていう思い込みを打ち消して、自分で考える力をみんなが持てれば、世界も変わるんじゃないかなと思っています。そのために、まずは自分の言いたいことを完成させたい。

やりたいこと全部は、残りの人生50年とかではできないと思っています。でも俺、輪廻転生的なのを信じているので、俺が死んだとしても世界に曲や言葉、ピースを残していれば、また甦った後にそれをインストールして、意志を繋げられるんじゃないかって。そんなイメージを持って生きていますね。

—生きているうちに、ラッパー、また人間として、こういう存在になりたいな、という思いはありますか?

俺は怒りっぽいので、怒らないように心がけてますね……まずはそこからだな(笑)。あとは、ネガティブな打ち消し発言とかもしないようにしたい。なぜかって、自分の文句は自分が一番よく聞いているんですよね。そうなると自分がその文句に支配されてしまうから、言わないようにしよう、って考えるようになりました。言霊。

「他にいなくね?こんな生き方 てな事ばっかするのがラッパー」

—お話の中でも、「縛りを持たない」ことや「好きに生きていく」といったワードが出てきましたが、ここで改めて「SUKIKATTE」の楽曲についてお伺いさせてください。そもそも「SUKIKATTE」をあのメンバーで作ろうとしたきっかけは何だったのでしょうか?

もともと、漢さんが鎖GROUPを立ち上げた時に、ダースレイダーさんが社長を務めていたレーベル、BLACK SWANと一緒にEPを作ろうということになり、その中で制作した曲でした。漢さんやDOGMAくんにやってもらいたいというのは最初から決めていました。このお二方ってほんとすごくて、それを近くで見て、そして自分を振り返ってみて「好き勝手に生きている人たちだな」というイメージが強くあって、このメンバーで曲をやるなら「好き勝手」をテーマにしよう、と思っていたんです。

だから、このテーマ自体が、メンツありきで決まった感じですね。音楽性などもそうですが、あの二人の人生観・生き方に感化されている部分があったので、そういう人たちの言葉で曲を作りたいと思いました。音楽であり、人生そのものがかっこいい人を誘って、ぜひその人の言葉を聞きたい、と思って。

合わせて、俺はラップを始めて間もない頃にLIBROさんの楽曲を聴いて、「なんだこの人は!」と衝撃を受けて以来、彼のラップもトラックも本当に好きで。だからLIBROさんのトラックでラップがしたい、ということを一番はじめに伝えていたんですよ。それと同時に、俺としてはどうしてもLIBROさんにもラップを入れてもらいたかったんです。「今回のテーマは『好き勝手』でお願いします」と伝えて、ダースさん経由で送ってもらったLIBROトラックでそれぞれverseを書いていたのですが、LIBROさん自身から「このトラックもいいんだけど、ガチッとハマるメロディーが浮かばないんだよね、違うトラックにしない?」という提案があって。「他にも何曲か持ってきたから聞いて」と言われ聴いた一曲目が、「SUKIKATTE」のトラックだったんです。即決。あの人のトラックって、言葉がはっきり見えて降りてくる感じがして、あまり時間もかからず書き上げました。

—曲全体を通して好きなラインは?

やっぱり「俺らやりたいことやる/やめたいことやめる/議論の余地なし/お前もだろ(LIBRO)」には「俺も!!」ってなりましたね(笑)このサビのリリックはレコーディングの当日まで知らなかったので、目の前であのverseをかまされて「……超やばいっすね…」って(笑)。
あのサビのリリックが入ったところで、より他のメンバーが言ってることというか、人生観を映したラインの意味がより強まって、俺の中で「また一つお宝ができたな」と思いました。この曲は宝物ですね、俺の。

—PONYさん、DOGMAさん、漢さんのリリックのベクトルはそれぞれ違いますが、あのフックがあることで一本筋が通ったように思いました。

DOGMAくんのverseも、聞いた瞬間に俺、クソ上がっちゃって(笑)「彼氏自慢の奥さんとヤって」……っていきなりやばいじゃないですか(笑)。そのあとに漢さんにサビ無し、verseでガツンと締めてもらって。ビデオも撮りたいね、という話になり、“Ghetto Hollywood”SITEさんにお願いをして撮ってもらいました。鎖のスタジオで撮らせてもらったのですが、あのオフィス兼スタジオ兼カフェは漢さんの頭の中を具現化した場所ともちら聞きしていたので、その場所での”日常”を1本で撮ろう、というニュアンスで、 ノーカット一本で撮っています。

—漢さんとPONYさんがすれ違う時の「礼」も、いつもやられているんですか?

「お辞儀スタイル」のことですね(笑)やりますね。
この曲の自分のverseでも始めに言っているのですが、「他にいなくね?こんな生き方/てな事ばっかするのがラッパー」スタイルなんですよ。俺、本気で好き勝手にやっていると、その時々の目標……小さいものから、馬鹿みたいだなと思っていたものまで、結構叶うなと思っていて。だから好き勝手にやろうぜ、っていうことを言いたかったし、再度自分自身に対しても言えるラインだなと思います。
実際に自分でもそう感じる瞬間があると、それを疑わないようにしよう、と考えているんです。ちょっと前と今で、聞いたことが全然違う、なんてことも多い、疑いやすい世の中だとは思うんですよ。だけど、叶ったことが偶然だとしても、その偶然って自分がこの方向に向かってきたから起こった偶然であって、その偶然を使って自分が目標や結果に向き合ったから環境が変化した、ということだと思うんですよね。

「人生は気まぐれ、俺もあんたもいつかは死ぬし、だから好き勝手いこうよ」みたいなを想いを込めています。インターネット、テレビ、いろんなニュースやゴシップがあるし、それを見て知った気になって楽しいのもわかるけど、自分で経験しないと面白くない。「生だやっぱ」というか、実際に経験すると「今日遊びに来てよかったな」とか「このために生きてるな」って思えるじゃないですか。

だから「SUKIKATTE」という言葉自体も、「やらなきゃいけないことをやらなくていい」というようなネガティブなイメージではなく、「ちゃんとやりたいことを自分でわかって、素直にやっていれば、それが一番ジャストだ」っていうポジティブなメッセージを歌っています。

最後の漢さんのverseでも「音楽で飯を食うなんて夢のまた夢/ましてやRAPで金を稼ぐなんてマジでナンセンスすぎる」って初っぱなから言ってるんですけど、それでも自分のやりたいことを見続けて、「何かあれば泣きべそをかくよりも/なにクソとリリック書こうぜ/もしもの話は無視して/文字を書いて儲ける計画に精出す」なわけです。だから、自分がやりたいことをわかってやっているし、「SUKIKATTE」をネガティブな意味で捉えないでほしい、っていうメッセージがここにもあると思っていて、そこんとこ逃さずに受け取ってほしいなって思いますね。

(聞き手:KANEKO THE FULLTIME 構成・文:Yasco.)

PONYさん 出演予定:
2017年12月15日(金)KING OF KINGS PLAY OFF at HARLEM 渋谷

2017年12月16日(土)新倉祭番外編 at 7th AVENUE 横浜・関内

2017年12月29日(金)KOYOI at KOFU SPACE101 甲府