SUKIKATTE 編集長から一言 Yasco.

ー今回「SUKIKATTE」というタイトルでメディアを作ることになりましたが、今後どういう人をモデルケースにしていきたいですか?

「好き勝手」に自分の思ってることを発言する、っていうのは誰にでもできることだけど、発言に対して責任を持てるかどうかが大切だと思う。言いっぱなしは誰にでもできるけど、そこに自分の考え方が伴っていたり、責任を持てる人たちにお話を聞きたいな。特にパフォーマーとして人前に立って発言をしている人や、それによって影響を出している人たちは、そういう責任感があるから最終的にリスペクトされていると思うので、今はHIP HOPの人たちを中心にインタビューをしているけど、今後ジャンルはそれに限らず広げていきたいと思っています。

ーメディアをやる上でのモチベーションはどこにある?

もともと私はファッション誌の編集者になりたかったんだよね。ファッション誌の編集者って、「オシャレになりたい」っていうモチベーションをわかりやすく喚起できるじゃない。

少し脱線するけど、私は昔オタクで全然オシャレじゃなくて、みんなが着ている服を私も着たい、って全く思えなかったのね。でもみんなと遊びに行く時に、さすがにちょっとはまともな服を着ないとな、と思って、ファッション誌を読んだんだけど全然面白くなくて……その中で1冊だけハマったのが「CUTiE」だった。その雑誌は「女の子が自立して、自分の好きな服を選べるようになりましょう」っていう思想のもとに作られてたから、流行っている格好をしようっていう普通のファッション誌とは全く違ったし、おかげでファッションに対するモチベーションを持てるようになって。
だからなんらかの思想を提示することで、読む人のモチベーションが変わる、っていうのは面白いな、と思うから、今回のメディアでも、いろんな人の思想を紹介することで、みんながそれぞれの「やりたいこと」について考えるきっかけを増やしていきたいです。

ー今回のメディアが持つ思想として、「SUKIKATTE」というテーマを選んだ理由は?

私、社会人になってから今まで「やすこさんが羨ましいです」って言われることがすごく多かったんだよね。それは多分見た目が自由すぎる、っていうのもあったと思うんだけど、学生時代から続けてた演劇に、学生時代と変わらないペースで出てた時期があって。今も演劇の出演数は減らしているけど、起業したり、ラップしたり……「何で社会人になったのに、なんでそんな好きなことをがっつりやってるの?よくわかりません」みたいなことをよく言われてた。

でも、私が新卒で入った会社は深夜残業が当たり前だったし、それでもやりたいと思ったから演劇をやっていただけなんだよね。「この3日間はどうしても公演で休みたいので、今週は死ぬ気で働きます!」みたいな……もちろん周りの人にも恵まれていたから、理解して協力してもらえているのだけど、彼らの信頼を勝ち得るために仕事も頑張ろうと思えたし。

限られた時間の中で、やりたいことを選んで、それに対して時間を作るのって、結局自分の責任だし、自分がやりたいことをやれるかどうかって、気の持ちようだと思うんですよ。でも私に羨ましいって言ってくる人や、相談をしてくる人って、「仕事が辛い、上司がわかってくれない。だから私は社畜なんだ」って言ってしまう人が多かったんだよね。
私たちは、別に会社の家畜ではないし、人間として考える頭があって働いているわけじゃない。なのに「社畜」って言い切ってしまうのは、考えることや、自分がやりたいことに対する責任を放棄してしまっているから、それってすごくよくないな、とずっと思っていて。

だから、今回のコンセプトは金子君が案を出してくれたのだけど、やりたいことをやるためにチャレンジしよう、週末やりたいことに時間を空けてみよう、とか、今日は早く仕事を終わらせてこのイベントに行ってみよう、という風に、自分の人生に設計図を書いて、それに責任を持つことを推奨するというテーマだな、と思ったから、全面的に同意しました。

ー今後、具体的にインタビューをしたい人っていますか?

これまで、人選を金子君が中心になって考えて、ライティングや編集を私が担当する、という形で進行してきたのだけど……例えば、これまでのHIP HOPの文脈だったら、同じ女性としてRUMIさんやAwichさんには話を聞いてみたいな。ただ、私はHIP HOPについても、その他のカルチャーについても知らないことが多すぎるし、そういう意味ではとにかくいろんな人に話を聞いてみたい。

昔、美術系媒体のライターをやっていたことがあったんだけど、もちろん「この人めっちゃ絵がうまいね」とか「この技法が斬新で…」ってだけでは語れない部分がすごく多かったのね。だから作品の基板になっている思想をちゃんと紹介することが大事だし、それで興味を持ってもらわないとあんまり意味がないな、ってことをすごく学べたな、と思ってるんだ。だから、いろんな人が活動に対して持っている思想をしっかり紹介していきたい。

特に思想とかって、周りにいる人たちに口で伝えておしまい、となりがちだとも思うから、「昔、どこの地方で●●ってやばい奴がいたらしい」とかで終わってしまうともったいないと思うんだよね。私は今年、MCバトルで地方の大会にエントリーする機会も多かったんだけど、やっぱりその土地土地にカラーがあって、それもまたひとつ面白い部分だと思う。だから地方で活躍している人たちにも話を聞きたいな。

あと、私、クリエイティビティがなかったことがコンプレックスで(笑)。今一緒に会社をやっているメンツが美術系の人たちだから、特に感じることが多いんだけど、1を100にするために調べ物をしたり、効率的に仕事をしたりするのは得意なんだけど、こだわって0→1のものづくりをすることが不得意だなと思っているんだ。
だから、そういう人たちが持っている思想を聞かないと、何か作品を見ても、同じ人間が作ったものだと思えないんだよね。だからちゃんと話を聞きたいし、それを伝える側に私は回りたいなって思うかな。

Yasco.
渋家株式会社取締役。学生時代から小劇場に役者として出演。舞台を通してラップと出会い、シンデレラMCバトルなど各種大会に出場。
会社員として働く人が、辛くて夢も自主性もない「社畜」と揶揄される現代に危機感を覚え、「社畜という言葉を撲滅する」をモットーに活動を展開している。